(前略)
続いては村山斉先生からの講演で、表題は「日本を救う基礎学問」。
基礎学問がいかに世の中の役に立ち、とりわけ日本の発展に欠くべからざる存在であったかを、数多くの事例とともに簡潔に分かりやすく論じて下さいました。
話の導入はアップルの創業者・スティーブ・ジョブズの次の言葉。
「人の心を動かすイノベーションは、テクノロジーとリベラルアーツの交差点から生まれる」
リベラルアーツとは、職業や専門に直接結びつかない教養、つまり基礎学問を意味します。
ジョブズの言葉通り数多くの破壊的イノベーションが、すぐには人の役に立ちそうもない基礎学問から生まれています。
放射線への興味からレントゲンやCTスキャンが生まれたことや、金属をどこまで低音で冷やせるか研究者が競っていたところ、冷却が進むとやがて電気抵抗がなくなるという“超伝導”現象を発見し、それがMRIやリニア新幹線を生んだこと。
素粒子物理学者同士の連絡ツールとしてHTML (Hyper Text Markup Language)が生まれ、それがインターネットのウェッブ(www)に発展したこと、純粋数学の素因数分解なくして暗号技術は存在しなかったことなどなど、数多くの興味深い事例をあげながら、村山先生は「真のブレークスルーは基礎学問からしか生まれない」ことを強調されました。
話題はそこから日本へと移ります。
天然資源にまったく恵まれず、国土の7割が山で耕地も少ない日本が、なぜかくも成功をおさめたのか、先生は解き起こします。
わずか150年前まで鎖国をしていた日本が、なぜ西欧列強に植民地化されず、急速に近代化できたのか。
その謎を解く鍵は、西洋の文明や学問を驚異的なスピードと的確さで吸収、理解、応用できた日本人の知的基盤にあり、それを築いたのは「基礎学問」であると村山先生は語ります。
資源のない日本は「頭脳」で勝ってきたこと、基礎学問や文化が日本を創り、その優位性を生み出してきたこと。
こうした日本の強みや成功要因を理解しなければ、今後の成功を作り出す政策は生まれないと、村山先生は指摘します。
基調講演最後のスライドは、OECD調べの「政府資金による研究開発出費のGDP比」。この各国比で日本は22位。
「日本の強みや勝負どころは、頭脳であり科学技術力」という歴史に刻まれた事実を、政府や国民が正しく理解しさえすれば、教育や研究開発に国が投じる予算額はもっともっと拡大して然るべきです。
そのためには、JVFでもフェニックス・プロジェクトでも、「知力」による日本再生のムーブメントを起こせるよう頑張らねばと思いますが、第一にはやはり日本のジャーナリズムがそうした機運を起こすよう本気で努力し連帯すべきでしょう。
さて次回のブログでは、知の基盤からシーズを生み出し、それをイノベーションにつなげてベネフィットを生み出し、そこからまた知の基盤へと投資がなされる「知の大循環」を、いかに作り出すかを議論したパネルディスカッションの模様をご紹介します。
90分以上に亘る白熱したパネルとなりましたが、もっと長く聴いていたかったという声を来場者から多数いただきましたので、どうぞお楽しみに…
※全文はこちらをご覧ください。
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